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**** 時 限 触 手 ****
あざやかな頬 あざやかな髪 その髪の色を風に流しな
がら 盲目の少女は唄う きらいだわ あたし こんな
に崖のおおい街はきらいだわ そのとき 切れた弦のよ
うにはじかれる陸橋を透かして 微少な非伝導模型とし
ての未来が見えるだろう 決して煮えたぎるということ
のない空 その水銀の雲に 水銀の文字で書かれる恋文
の差出人が いつでも不明なのは なぜ まるで油状コ
ロイドのように浮遊する自動車群の行く先は みんな読
まれている 市長公室で居眠りをしているあの人を含め
て すべての男たちの心は やはり 少女に読まれてし
まうのだ それならば どうして あざやかな髪 あざ
やかな頬 その頬の色が どうでもよい哀れみのように
読まれることはないのだろうか 舗道 または 舗道の
裂け目 階段 または 階段の頂上 仔犬 または 仔
犬の綿毛のようにふるえている憎悪を胸に 少女が 崖
下の小屋のなかで眠りこんでいる いつかの夜ふけにも
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[Postscript] この詩が生まれたときのことは,ぼんや
りとしかおぼえていない.わたしは,かなり角度のきつ
い坂の下に位置した喫茶店のおおきなガラス窓に面した
テーブルで本を読んでいた.たしか,ウィリアム・バロ
ウズの「裸のランチ」だったように思う.そのとき,あ
の少女が,わたしの目の前を走りぬけていったのだ.そ
れともあれは夢のなかでのことだったのだろうか.
KISHIDA Kouichi,
k2@sra.co.jp