[Prescript] この夏,大連郊外の海水浴場近くのホテルに泊まって会議を
した.泳ぐ暇はなかった.夜,ダウンタウンに出かけ, デパートの食品売
場を覗いて,長さ十数メートルあるガラスの商品ケースにびっしりと並べ
られた乾燥ナマコの種類の多さに圧倒された.
種類といっても,こちらの目には大きさの違い程度しかわからないのだが,
値段を見るとピンからキリまで,千差万別.それらを眺めているうちにな
んだかSF映画の一場面にまぎれこんだような気がした.
その後,街を散策していてぶつかった大広場での野外ダンスパーティも異
様だった.広場をとりまく建物は旧ロシア時代および満州帝国時代のなご
りをとどめる洋風建築.それらがライトアップされた中心の広場で何千人
もの人たちが踊り狂っている.現地の人は「毎晩ですよ」と平気な顔.
ということで,海を題材にしたSF仕立ての Horror Poem.
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毒性魚拓
いやな魚がわたしを食べる おそらく かれらは
またすぐに気まぐれな回遊の旅に出て行くのだろ
う 泡のような集合住宅の底でこの惑星の海の悲
惨な過去を回想する仕事はつらいので かれらは
いつも出ていってしまう 街角でやせた娘たちが
霧からミルクを絞りだすその慣れた手つきを眺め
ているだけで この世界が恐ろしい泡のように閉
じていることを忘れられたらうれしい しかし
手早く没収され封印されてしまう海流 なかば舌
を出したまま魚たちの唇は閉じ 氷の寝台の上で
娘たちのふとももは閉じる そして どこにも一
枚の花びらもなしに海底都市の夜も閉じる やが
て 魚群がふたたび帰ってくる遅い食卓 皿の上
にわたしはもうほんの一部分しか残っていないの
で こんなふうに立ち上がることなどできはしな
いのだ 制服 そう うろこもようの制服を着て
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KISHIDA Kouichi,
k2@sra.co.jp